田山花袋『近代の小説』(春陽堂文庫)昭和7

隣町の古本屋にて購入
この古本屋の存在は小さい時から知っていたけど、小さい頃は古本屋なんて興味がなかったし、古本屋に入る機会が増えてからも『こんな田舎にあるひなびた古本屋、漫画としょぼい本しかないだろう』と思って入らずにいた。
今日、その古本屋の向かいの電器屋電動歯ブラシを買ったついでに、なんとなく中へ入ってみた。
俺の姿をみつけた店主のおじいさんが、広島県らしいイントネーションで「どんな本を探しよるん?」と話し掛けてくる。いえ、特に探してるわけではないんですけど、と言って、棚に目を戻す。案外ふつうの(少し古めの)小説やエッセイが並んでいる。思っていたよりもふつうで良い古本屋だな、こういう古本屋は応援しないとな、と思うのだけど、俺が手に取りたくなるような本はない。
ううむ、とうなりながら文庫コーナーで移動。昔からあるだけあって、かなり古そうな文庫本が並んでいるな、と思って目を滑らせていると、この『近代の小説』が目に入ってくる。おお、「いつか読んでみたいなあ」と思いながらも出会ったことがなかったこの本が、地元の古本屋にあっただなんて。まさに灯台下暗しだ。
さっそく帳場へ持っていくと、おじいさんが申し訳なさそうな表情に変わる。「この本、あまりないけえねえ」「昭和7年だから、ちょっと、1000円になってしまうんよねえ」そんな申し訳なさそうにしなくたって、買いますって(そもそも値段に納得が行かなかったら帳場に持ってこないってば)。昭和7年の本にしては異様にきれいだし、(俺にとってはどうでもいいことだけど)初版だし、1000円は高くないんじゃないかなあ。ま、この本を見かけたのは初めてだから、しらないけどさ。
とにかく、『東京の三十年』のほうはちょくちょく見かけるけど、こっちは読みたくても中々出会わなかった*1ので、嬉しい。

*1:全集を借りて読もうと思ったこともあるけど、全集本は図書館で借りてきてもなかなか開く気が起こらない。それから、いつも言っていることだけど、俺の目に入ってこないだけであって、この本が一般的に珍しいのかどうかは知らない。