もう書くのをやめようかと思っていた。こっちも、買った本なんてメモしなくたって、棚見りゃ分かるじゃん、とも思ったのだけど、或る本を、いつ、どこで、どういう流れ・理由で買ったのか、自分のためにメモしておこうと思って、こちらは続けることにした。
ちまちま読み進めている小泉信三の日記が予想通り面白い。あとがきに、長女である秋山加代が

父がいま生きて居たら、目をまるくして、
「こんなものも本にするのかい?」
と言うかも知れない。
「九十年前の東京やロンドンを、現在と比べて面白いから」
と、答えたら、
「そうかねえ、君たちから見ればそうかも知れないねえ」
と言うだろうと、私は勝手に考えている。

と書いているが、僕は、単に「九十年前の東京」と現在の東京の風景や風俗とを比べて面白いというよりも、この時代に生きていた一青年の思考・嗜好・行動・気分、あるいはこの時代に漂っていた雰囲気が感じられて面白い。
教員になったのはこの日記が始まる前年だが、講義を持ったのはこの日記が始まる昭和44年なのだろうか。ともかく、こういう人が塾長になる時代があったのだ。羨んでも仕方がないのだが、ただただ羨ましい。