福満しげゆき『まだ旅立ってもいないのに』(青林工藝舎)2003

ジュンク堂書店新宿店にて購入

福満しげゆき僕の小規模な失敗』(青林工藝舎)2005

ジュンク堂書店新宿店にて購入
あまり漫画の単行本を買わない。漫画雑誌はあれこれ買っているのだけど、わざわざ単行本で買って再読したいというほどの漫画にあまり出合わない。
読んでいないフリをして、こっそり『モーニング』も読んでいる。その『モーニング』で、気になる漫画がある。それがこの福満しげゆきの「僕の小規模な生活」という連載だ。
俺が知っているモノなんてほとんどの日本人は既に知っているだろうと思っているので、いまさら説明する必要もない気がするけど、いかにもガロっぽいタッチ(って、ガロに載っていた作品を読んだことは一度もないのだが)。でも、別にガロにあこがれて漫画を描き始めたわけではないようだ。何かのインタビューでは、『ドラゴンボール』みたいな漫画のほうが楽しいじゃないですか、とも言っていた。
僕の小規模な失敗』や連載中の「僕の小規模な生活」は、作者自身が主人公の私小説ならぬ私漫画だ。前者は工業高校に入学するところから始まる。漫画を描いて持ち込みに行ったり、漫画を描くのが嫌になってバイトでただただ生活したり、あまりパッとしない日常があり、そこでの主人公の自問自答が描かれている。
青林工藝舎から出ている漫画で、自問自答。そういうと、なんだか暗くてジメジメした作品のように思えるかもしれない。暗いのは暗いけど、そんなに湿度は高くなくて、そこに好感が持てる。自分以外の、うまいことやっている若者への妬みはこれでもかってくらいあるんだけど、そういう妬みを抱いている自分をどこかで突き放している。
高校時代や大学時代に、うまいこと青春を謳歌している風な若者に対して「けっ」と思いながら過ごしている人は多い、多いけど、そういう人は(俺も含めて)そんなに行動力があるわけではない。でも、この作者は、ふつうにしているつもりでも意外と行動的だし、平凡な性格のようでいて案外破綻している。そこもまた面白い。