『ROCKIN' ON JAPAN』1月号

芳林堂書店高田馬場店にて購入

  • シーナリンゴ

仕事として活動をこなしている、できれば自分の声はつかいたくない、というような話を読んで、時が経てば経つほど『俺が好きだった彼女は、俺がかってに抱いていた幻想だったんだな』という気分にさせられる。
それは仕方がない。だけど、次のようなやりとりは、まったく理解できない。

●じゃあそこまで言ってもらえたので、もう簡単に言っちゃうと――椎名林檎ってアーティストのいいところ、面白いところはいっぱいあるんですけども、一つすごい惹かれるところは――僕は音楽によって幸せになってる人を見るのは好きなんですよね。ただ、ステージに立つこととか人前に出ること、客前に出ることによって幸せになっている人を見るのは、あんまし好きじゃないんですよ。
「そんな人いますか?」
●いなくはないと思うんですよね。これは松尾スズキさんの受け売りなんですけど――柄本明さんの言葉があって。「役者はなんで舞台の上で幸せになりたがるんだろう」っていう。「舞台に上がるっていう時点で不幸なのに」っていう。
「へえ。あたしも好きだけど、柄本さん」
●まさに「そっかあ」と思ったんですね。まあ、っていうのに当てはまると非常にわかりやすいんですけれども。「ここが私の場所なんだ!」ってなっているのを見るとちょっと、辛いんですよね、僕は。
「はははは。でも、あんまり見たことないなあ、そういう人。友達とかでも」
●その居心地の悪さをちゃんと出すじゃないですか、椎名林檎さんは。
「(笑)嘘? 出ないようにしてるつもりなんですけど」
●でも、それが逆に出ない人を見てても、感動しないというか。
「……やっぱり、ばれちゃうもんなんですね」

出たくないんなら出なければいい。ステージに経って音楽をやりたいから、なんとかいうオーディションを受けて、東芝EMIに売り込んで、って活動してきたんじゃないのか。本名の椎名ナントカさんとしては、ステージは居心地が悪いかもしれないけど、シーナリンゴは、ステージ以外のどこで生きるんだ?
インタビュアーである兵庫氏の感覚もよく分からない。たしかに、ここが俺の場所だぜ!みんな愛してるぜ!みたいなノリには興味がないけど、でも、人前に出るというシンドさがあったとしても、それを乗り越える、それは単に音が鳴っているからではなく、自分が音を鳴らして、その音を聴いて興奮している人たちがいて、幸せになるのではないのだろうか。単に音だけで幸せになれるんなら、ライヴなんてやる必要はない。ただただ苦痛に感じながらステージに立っている人を観るのは、こっちにとっても苦痛だ。
ザゼンの向井さんはよく、単に聴いてもらうんじゃなくって、首根っこをつかまえて『この曲いいやろ?』と聴かせたい、そこで向井かっこいーね、と言われることで達成される、ということをよく言っている。

『MUSIC MAGAZINE』1月号

芳林堂書店高田馬場店にて購入
特集は「ベスト・アルバム2006」。
日本のロックアルバムBEAST10に『ZAZEN BOYS 3』が入っていた。それから、こないだ観た二階堂和美も。
くるりの人もマイ・ベストを回答していた。ほとんどクラシックだったけど。